「ごめんね、もう切るよ。優人帰ってきた……」
『分かった。また鍋でな。優人さんにもよろしく』
こんな形で最後の電話を切ることになるなんて……。もっと別の切り方がよかった。
でも、かえってよかったのかもしれない。こうでもしないと、いつまでも切れなかった。
引き伸ばしたのが無駄だったと言われたみたいに、電話は切られた。
二度と、あんな風に話せない。
並河君とも、彼のおばあさんとも……。
異なる性質の悲しみが絡まり合って、喉をつまらる。
無理矢理にでも気持ちを切り替えるため、玄関で優人を出迎えた。
「お疲れ様! トラブルはよかったの?」
「俺が対処した方が早いけど、部下に任せてきた。勉強になるだろうしね」
「そうだったんだ。早く終われてよかったね」
上着を脱いで手を洗うと、優人はさっそく夕食を食べ始めた。
大学卒業後から働いている今の会社で、優人は主任の立場にある。30歳手前の昇進だった。ある程度部下に指示する権限があるらしい。
「あまちゃん、目、赤くない?」
突然そんなことを言われ、ヒヤリとした。


