嫌だ。離れていかないでーー!
別れたくない。友達でもいい。他に彼女がいてもいい。
触れられなくても、好きな時に会えなくても。だから……。
心の奥からどんどん本音が溢れ出る。大学の頃恋愛に夢中だった美季の気持ちに、今なら深く共感できると思った。
人を好きになると、こんなにも激しく心が動いてしまう。いっそ自分でコントロールできたら楽なのに。
泣くのを我慢しているせいか、やけに全身が熱い。嫌な熱だ。それでも、気持ちの一部は残酷なほど冷静に今の自分を見つめていた。
彼の愛情を受け入れられないくせに引き止める資格はない。
それが模範的な答え。綺麗な恋の終わらせ方。
「そうだね。ちゃんと終わらせないとね」
演技じみていてもいい。私は元気に言ってみせた。
「秋月さん、私達のこと疑ってるみたいだから安心させてあげてね」
『分かった』
「鍋、楽しみだね」
『そうだな。香織からその話聞いた時はビックリしたけど』
「皆でパーッととかそういうの、あまりやらない人?」
『うん。初めて。友達の話も聞かないしな』
「そうだったんだ。私も誘われた時ビックリしたよ」
『生徒と講師、しかも知り合ったばかりだしな』
「そうそう!」
秋月さんの話をするのは複雑な気分だけど、何でもいいから話していたくて、がんばった。
昔のように話しているけど、これは最後の電話。
わずかな沈黙が心に重たいものを残していく。


