自由にしてあげるべきだと思い、本気で離婚を申し出た日もあった。結婚2年目の頃だった。
それでも優人は私と別れたくないと言って、泣いた。そして、怒った。
『二度とそんなこと口にしないで……! 俺は一生あまちゃんと添い遂げるつもりだから。ずっとそばにいるから!』
またひとつ、罪を作った夜だった。
優人にそんな思いをさせておきながら自分だけ並河君と幸せになるだなんて、許されないーー。
たとえ今並河君と結ばれ子供を授かったとしても、私は優人と別れられない。
汚れきった心。これ以上、自分に幻滅したくない。
私の気持ちを読んだように、並河君は優しく訊いてきた。
『今、幸せ?』
「うん。幸せだよ」
結婚後、メールでも何回かそう尋ねられたことがある。そのたび私は幸せだと返した。結婚生活で起きたつらいことは、並河君には一切話したことがない。
『よかった。これで気兼ねなく言える』
「……何?」
『さよなら、詩織』
「……!!」
『今までありがとう。こんな俺を好きになってくれて。幸せな思い出をたくさんくれて。この先何があっても、詩織のことは忘れないから』


