おばあさんのお墓に行きたい。
それすら、既婚の身では禁句だろうか?
何も言えず黙っていると、並河君は話を戻した。
『詩織の元に行けなかったこと、連絡のひとつもできなかったこと、ずっと後悔してた……』
それは仕方がない。今は本気でそう思う。並河君も、その時は自分のことで精一杯だったのだから。
『あの時、駅で告白してくれるつもりだったって、そう、うぬぼれてもいい?』
「そうだよ。あの日、並河君の気持ちを確かめるつもりだった」
私なんかこんなこと言う資格ない。言ってる自分が嫌になる。
並河君のことを、最後の最後、大切なところで信じられなかった。
呼び出しに応じなかった並河君を薄情だと心の中で非難したけど、薄情なのは私の方。
『詩織の家に電話したらお母さんが出て、大学の寮に引っ越したって言われた』
「うん……」
声が震える。自分の不甲斐なさに涙が止まらない。
『あの時駅で会えてたら、俺達付き合えてたかな?』
「うん」
私が泣きやむのを待っているみたいに、並河君は口を閉ざした。優しい静けさに、よけい涙がこぼれた。
ひたすら胸が痛い。
後悔。悔しさ。喜び。色んな感情がないまぜになる。
気持ちの揺れはしばらく止まりそうにないけど、せっかく電話しているのに無言のまま時が過ぎるなんてもったいない気がした。袖口で涙を拭き、強引に泣きやむ。
「そういえば、田中さん以来女子と付き合ってなかったね、並河君。モテたのに」
『詩織だけ見てくって決めたから。嫉妬させたいだなんて……。ガキだったな』
「並河君は同年代よりずっと大人っぽいよ。昔も今も」
『歳だけ大人で、今も中身は子供かもよ? 結婚してる詩織を、大切な旦那さんがいる人を、自分勝手に独占したいと思ってる』


