並河君の事情など考える心の余裕はなく、むしろ自分ばかり嫌な思いをしたと、負の感情に支配されそうになる。
実家から寮へ引っ越したり、サークルに参加したり、新歓コンパに行ったり、バイトを探さなければならなかったり、多忙な時に受けた連絡。
難しいことを深く考えるヒマがなく、また、並河君に対して不信感も生まれていたため、とても会う気にはなれなかった。
《こっちこそあの時は急にごめんね。何でもないからもう忘れて!美大での生活はどう?こっちは毎日楽しんでるよ〜》
楽しんでいる。その一言は、連絡をくれなかった並河君への嫌味。他の文面は急ごしらえの本音。
会いたいという彼の言葉をスルーした。
並河君とは、恋を意識せず、男と女の壁を越えた友達として付き合うのが一番いい。そう思った。
実際、私が何でもない風なメールを送ったことで、並河君との友達付き合いは驚くほどの勢いで復活した。お互い大学での生活が忙しいので高校の時ほどとはいかないものの、週に何度かメールをし、電話をした。
大学に入り、出会いが増え、彼氏もできた。同じ大学の人と付き合うと別れた時に気まずいので、そのうちバイト先や友達の紹介といった、大学とは関係ない場所で彼氏を作るようになった。


