セカンドパートナー


「分かんないよ。今日、クラスの子からマフィン預かったし……」
「え!?」

 それまで落ち着いていた羽留が、あからさまに動揺した。その様子に、私もつられてソワソワしてしまう。

「それ、並河君に渡せって言われたの?」
「う、うん。田中さんっていう子なんだけど、自分で渡す勇気ないみたいで、私に頼んできた。並河君としゃべってるとこ見られてたっぽくて、それで」
「そんなの引き受けることないのに!」
「でも、断ったらゴチャゴチャしそう……」
「そうだけど、でも……」

 羽留は何かを我慢しているみたいに両手を握りしめ、首を横に振った。

「渡すの断れなかったのはもう仕方ないとして、並河君には、それ、女子からのって言わない方がいいと思う!」

 羽留は、いつになく強い言い方をした。田中さんに腹を立てているみたいだ。

「田中さんだっけ? その子に会ったことないから確実なこと言えないけど、詩織にそんなこと頼むって、宣戦布告もいいとこだよ! 並河君と詩織の間に割り込んで二人の関係壊そうとしてるようにしか見えない……」
「田中さんが…? 宣戦布告?」

 羽留の言っていることが、よく分からなかった。

 並河君と私は友達だから、田中さんのマフィンを渡したくらいで友人関係が壊れるなんて、ないはずだ。

 保健室で並河君と話したこともあり、この時の私には変な自信があった。並河君とはこのまま変わらない友情がずっと続いていくのだと。