並河君は私の言葉を待ってるみたいに黙ったままこちらを見つめていた。目を伏せても、並河君の視線が私に向いているのは気配でなんとなく分かる。
いやに突っ込んでくる並河君の気持ちが、その理由が、分からなかった。友達の羽留や美季ですら、ここまで踏み込んできたことはない。
このまま黙っていた方が、楽だと思う。
親のことを下手に話して、そういう子なんだって目で見られるのも嫌。変なイメージを持たれて嫌われたくない。
でも、ここで何も話さなかったら、並河君との距離はきっとこのまま。友達っていう肩書きだけの、中身のない関係になるんじゃない?
覚悟を決めて、私は重たい口を開いた。
「中学の頃、ウワサ絡みで色々あって」
さすがに家のこと全部は言えないけど、学校であったことならまだ話しやすい。中学時代、バスケ部のキャプテンとウワサになったことや、そのせいで女子から嫌がらせを受け物を壊されたこと、それで親に怒られたことを、はしょって話した。
全部本当のこと。だけど、心境的には作り話。
並河君が求めている答えじゃないだろうけど、これが精一杯。
「そういうことがあったから家にいても親と気まずいし、女子との関係がおかしくなるのが嫌で、学校でも恋愛の話はしないって決めてる」
「話してくれてありがとう。つらかったな……」


