「寝不足なのか?」
心地良さにウトウトしていたら耳に低い声が響いた。
薄っすらと目を開ければ、テーブルを挟んで向かい側に座っている匡ちゃんが私の顔を覗き込んでいた。
「コーヒー出来たぞ」
「ん、ありがとう」
くあッと伸びをして頭を覚醒させてからテーブルの上に置かれた淹れたてのコーヒーに手を伸ばす。
自然と視界に入った下皿には倉庫に連れて行かれた日のように砂糖もミルクも載っていなくて思わず顔が綻ぶ。
覚えててくれたんだ。
私がコーヒーはブラックしか好まないって。
砂糖とミルクが入ったやつが飲めないわけではないけど好きじゃない。
ブラックの方が好きだし今までもブラックしか飲んでこなかった。
だから倉庫に連れて行かれた日、カップと一緒に出てきたミルクと砂糖に違和感を感じたんだ。
「仕事、邪魔しちゃった?」
私と同じコーヒーを飲みながら難しい顔で片手に持つ書類を眺めるというより睨んでる匡ちゃん。
何も考えずにここに来ちゃったからな〜。
邪魔しちゃったら申し訳ない。
「いや、平気だ。それより、なんか昨日鈴木がお前にキレてたぞ」
やっと書類から上げた顔は若干疲れてる気がする。
「鈴木?」
それ、誰ですか?
キレられるような事してないよ私。学校の中では。なんせこの格好なんだから優等生の中の優等生だと思ってるんだけど。
まずそもそも、悲しいことにキレられるような言動をするような相手もいない。
「あ?何言ってんだ?お前の担任だろ」
お前が何言ってんだ。
たった今匡ちゃんの口から出た言葉と全く同じような「お前何言ってんの?」って顔をした匡ちゃんに軽く殺意。
「…バレたらどうすんの」
呼び捨てで呼びたいならせめて鈴ちゃんにしろ。
その方が伝わるしきっと本人も嬉しいだろうし。
「俺が、他人に聞こえるような場所を主な仕事場にすると思うか?」
そんなことを言ってるんじゃねえよ。
「ここが防音なのは知ってる。ただ、外でヘマしないように気をつけなよ」
「この俺が……ーーー」
「ま、ヘマするわけないか」
面倒なことになりそうだからバッサリ切るのが最適な対処法。
