紅〜kurenai〜






「はぁ〜」




目に付いた白い小さな箱にため息が出る。




目につかないところに置けばいい、それか一層の事捨ててしまえばいいと思うのにやはり捨てられない。



万が一、そう考えると捨てることを躊躇う。




それに、吸わないって決めたのに自分を殺したくなるほど憎く感じる時、どうしようもなくニコチンを摂取したくなるんだ。






身体に悪いからとかそんな正しい理由なんかじゃなくて、ただ、思い出してしまうから。

その思い出が今の私を苦しめることくらい自分でもわかってるから吸わないって決めたのに。









タバコの箱とライターを片手にベランダへと向かってる時点でもう救いようがないのかもしれない。







窓を開ければ一瞬にして夏のじりじりと照りつける太陽が私を照らし蒸し暑い空気が纏わりつく。


けど、部屋に匂いを残すことはしたくないから家の中では絶対に吸わないようにしているため暑さを我慢して外に出た。













そこからはこの親しみのない街が見渡せる。


もちろんいつも仁人に降ろしてもらっているコンビニも。

そしていつもの変わらない治安の悪さも。





どこもどの街も同じだ、と言う人がいるかもしれない。




それは人それぞれだ。



私にとって彼処が1番であるのと同じように…




–––––––––––彼処はこんな汚れたところじゃなかった。



頭の片隅でそんなことを考えながら、コンビニの裏にある廃墟ビルの駐車場で勃発中の喧嘩を眺める。








この繁華街を支配している奴等に見つからないため、目立たないところを好み自分たちの鬱憤を晴らす。





別にそれも人それぞれだ。


どこで何しようが何を思おうが。







それを私がアレコレ言える立場でもない。




けど、ただ群がって自分の憂さ晴らしのために足掻いてる奴等でさえも今の私からしたら羨ましいと思うんだ。









自分の欲望のままに生きているその姿が羨ましいと思う。



それと同時に忌々しく感じる。






道を外れても尚、表の世界に守られているその存在が。






表の世界では知ることのない、裏の世界の––––––––––






ピリリリリリリッ







タイミングが良いのか悪いのか。

どちらかわからないけど私が負の感情に陥る寸前で再び部屋の中にある私の携帯が音を鳴らした。