「…失礼します」 そっと男の人の腕に触れてみる。 …冷たい。 驚くことに、男の人の腕は死んだように冷たいのだ。 今は、蝉が五月蝿いほどに鳴く夏。 この季節にこんなに冷たい人がいるのだろうか。 「…あの、大丈夫ですか?」 確かめるために、思い切って声をかけてみた。 しかし、返事が返ってくる気配がない。 意識を失っているのだろうか。