──ジャリッ
夜も更けた小路に、アタシと兄上二人の足音が静かに響く。
『どうか、どうかっ!!姫様をお救い下さいませ…っ』
そう四の君の乳母殿に悲痛な声で、助けを求められ、右大弁様のお邸を出たのだった。
こっそりと通された局には、乳母殿が臥せっていて、四の君の身の上を嘆き涙を流していた。
きっと、妖力に当てられたのだろう。
四の君が住まいとしている対屋は、まがまがしい妖力で満ちていた。
しかし悔しいことに、あれだけの妖力を目の前にしても、元凶となる異形のモノの正体が、皆目検討もつかないのだ。
「…っ」
唇を噛むアタシを見て、兄上が言葉を発する。
「そう、自分を責めてはいけないよ。四の君の負の念の相手が解っただけでも、十分だ。」
「…はい。」
「姫、私におぶさりますか?」
流石に息が上がってきたアタシを見兼ねてか、六合が気を利かせる。
「ありがとう、だけど大丈夫よ」
アタシはそう断ったのだけど、兄上が口を挟む。
「聖凪、せっかくの申し出だ、そうして貰いなさい。その方が早い。それに…」
着いたとしても、聖凪が疲れていたら意味がないだろう?と付け足す。
兄上に向けていた視線を、アタシの横を気遣う様に並走すり六合に向ける。
六合はアタシと目が合うと、コクリと真剣な顔で頷く。
周りに控えている天将たちを見ても、「その方がいいわよ」と言わんばかりに頷く。
「…それなら、お願いしても…いいかしら?」
「もちろんですよ」
控えめに言うアタシに六合はニコリと頷き、アタシの膝と肩に腕を回して、アタシを抱える。
「では、行きますよ」と、物凄い早さで進みだした。


