平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




「なら分かったわ。では太裳、玄武はこないようだから、二人で行きましょう?」



「太裳はワタクシを止めないでしょう」と太裳の手を取り、立ち上がる。



「そうね、別に聖凪の素性が知られようが、知られまいが、私には関係の無い事だもの。」



シレッと言ってのけた太裳に、流石に頭の血管が浮き出そうになった。



「…なら、行きましょう」と、外に出る支度を始めると、案の定玄武が怒り始めた。



少し見た目が冷たそうで、性格は落ち着いてはいるが何処か、大人気ない玄武だが、面倒見は良いのだろう。



「聖凪!!私は貴女の為を思って言っているのよ!?」



それは、分かってはいるけれど…アタシには時間が無いのだ。



お祖父様をはじめ、一族の方々には申し訳ないけれど、多少の無茶は仕方がないと思っている。



お父様や兄上や、陰陽寮の陰陽師たちがいる事は知っている、誰に命ぜられた訳でもない。



だけど、都を…この国を護るのだと、アタシは自分に誓ったんだ。



「ごめんなさい、玄武。今度ばかりは、何を言われても引き下がる訳には行かないの。」



アタシの本気が伝わるように、真っ直ぐに玄武の瞳を見つめる。



ジッと、アタシを見つめ返していた玄武が、目を閉じて深いため息をついた。



「…もう、分かったわよ。私がお供になろうじゃない…だけど、今回だけよ?」



「玄武っ」



玄武は、「まったく」と呆れていたけれど、直ぐにアタシの無理なお願いを聞いてくれるようだ。



「ありがとう!!」



アタシは太裳と目を合わせて、ニッとお互いに微笑み合う。



「何かしら、その合図は?」



う"…



恐ろしい。