一瞬だけ詰まった顔をした柊杞だったが、すぐに持ちなおしいつもの何事にも動じない、という顔に戻った。



「姫様には更に上を目指して頂きます…いいえ、目指して頂かなければいけません。」



断言した柊杞が鬼に見えた。



アタシより頭の良い女房が居ないというのに、いったいどうやって上を目指すと言うのか。



たしかに詩は少し苦手だけれども、みっともないということもない。琴は内内裏の宮廷雅楽師にも劣らない腕だし、縫い物だって、一日に二つは縫い上げられる。



こんなアタシに更に上を目指させる柊杞はいったい何なのよ!!



「鬼。」



「何とでもお言いになってくださいな。」



「ふん。」



「さあさあ、習い事をしませんと。先生が東対にもう半刻もお待ちですよ!!」



また脱走を試みたが、柊杞がガッチリとアタシの腕を捕まえているためにそれも出来ない。



はぁぁ…



まったく柊杞はアタシを自分と同じような頭の切れる女房にしたいと考えているのだろうか。



っ女房?!