平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




「中将の君…。」



何となく、もう名前で呼ぶのは行けないように思えたので、通り名で呼ぶ。



「何でしょう?」



すぐ近くに控えていた柊杞が、アタシの側近くに寄ってくる。



「…特に用はないのだけど、なんだか毎日小姫と過ごしていたから、何もする事が思いつかないの。」



この二条のお邸に遣ってきてから、はや五日。ようやく、こちらの暮らしにも慣れてきた。



だけど…



アタシでさえ、こうなるのだから一条の聖はどんなに悲しんでいるだろう…。



その事がとても気がかりで、ついついため息の量が増えてしまう。



「会いたいわ…」



「姫様…。」



目を伏せるアタシに、柊杞はどうしたらよいか、困っている。



御簾を上げて、雪を見ながら物語を読み合っている女童たちが「姫様も如何ですか?」と気を遣ってくれているが、気がのらず断った。



はぁ…



何度目か分からないため息をつき、声に出さずあることを決心する。



───今夜は、都に出よう。



今まで控えてきていたけど、やっぱりアタシにお姫様は似合わない。