平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




「姫様、藤原有嗣様がおみえになりました。」



若い女房が、あまり気が進まない面会の相手が来たことを告げる。



はぁ…



「そう…お通ししてちょうだい。」



脇息に体重を預けながら、やる気無さげに女房に指示する。



本当に嫌。このまま此処から居なくなりたい、そう思うが恐ろしい乳母の目が光っている。



「中将の君、どこにお通ししたらよいのでしょうか?」



若い女房が、柊杞に問い掛ける。



「庭で、いいわよ。」



「姫様っ!!」



ぶっきらぼうに、言い放つアタシを柊杞が嗜める。



「そうねぇ…西側の簀子にお通しして。」



「かしこまりました。」と女房は下がっていった。



はぁ…



今日何度目か分からない溜め息をつく。なぜ、アタシがこのような目に合わなければならないのか。