立ち上がったアタシの隣で、悔しそうに見上げてくるのが玄武(ゲンブ)。この人にも見える少女は安倍晴明の式神の一人。
大方、いつまでたっても帰ってこないアタシの捜索に遣わしたのだろう。
「姫、助けに来たのにその言い草は、失礼だわっ!!」
「あら、ごめんなさい。」
「心がこもってないのよっ!!」
アタシの態度に、玄武は悔しそうに地団駄を踏む。
「性格悪いわよ!!」
「フフッ、冗談よ。わざわざありがとうございます。」
そう言って、身の丈が低い玄武の頭を撫でる。
されるがままになっている玄武は、拗ねた声でポツリと呟いた。
「そんなこと、知ってる。」
東の空を見上げると、少し蒼白く染まり始めていた。そろそろ帰らないと、本当に顔を見られてしまう。
もう、位の低い大内裏のお役人達が出仕し始めてもおかしくない時刻。
そろそろ、卯の刻になるころかしら?
「帰ったら、柊杞をはじめたくさんの人たちに怒られるのでしょうね。」
眉をひそめるアタシに、玄武は「自業自得よ!!」と冷たく言い放った。


