平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




きっと止めてくれる。



という自信があるから、愚痴を溢せるのだ。止めて貰えないのなら、引くしかない。



引くに引けない場面もあるが、今はそねような無謀をする時でもない。



「少しは主をたてるものよ」



「それは無理よ、聖凪をたてるなんて。」



「玄武?」



「なあに?」



憎らしい程気持ちの良い笑顔を向けてくる玄武に、優しく微笑む。



「内裏の何処かしらに父上がいらっしゃるはずだから、お伺いしてきなさい」



頼んだわよ、と怖い程の笑顔で念を押す私に、玄武は心底悔しげに桐壺を飛び出して行った。



私の笑顔を見ていたかは分からないが、その瞬間、姫宮は笑うのを止め、その表情には若干の恐怖が滲んでいたらしい。



姫宮の側にいた貴人が、控えめに話していたので、信憑性は高いと思われる。



気を付けねば。



こんな私だろうが、やはり我が子の前では優しい面だけ見せていたいではないか。



そう考えていた矢先、玄武からの報を受けて、幾分不機嫌な顔になってしまったのは許されるだろう。



「心配せずともよい、なんて……余計気になるわ」




ここには当然、占具はないし陰陽道の書物も少ない。



頼るは星見と夢、十二天将のみなのだ。



「姫の身分を慮っての事ですよ」



取り成す太陰を上目遣いにみる。



「でも父親ならば娘の性格を分かって欲しいわ」



分からない事は余計気になってしまうではないか。