貴雄様は手にした扇を見つめて黙り込まれる。
「何か話がおありなのでしょう?」
そう問いかけると、貴雄様は申し訳なさそうに切なそうに此方に向き直られる。
「やはり全てお見通しなのですね、貴女は」
「星見という学問がありますれば」
すまして答えると、貴雄様は切なそうに笑われる。
「少しは嫉妬でもしてくれればよいものを」
「これでも十分やきもきしております。分かって下さいませ」
そう言うと、貴雄様は肩をすくめられ、膝の上に置いた私の手を握られる。
「更衣が懐妊しました。三月になるそうです」
視界の端で真子の肩が揺れる。
「……おめでとうございます。どうぞお身体をお大事に、と」
やはり覚悟はしていても、本人から伝えられると、それが事実だと実感してしまう。
貴雄様には私だけではない。それは分かっていて、覚悟もしていたつもりなのだが、足らなかったようだ。
でも、ご自分で伝えに来て下さるなど、本来ありえない事だ。
その優しさは伝わった。
「今日このような時間に此処へいらっしゃったのは、更衣様の所へ行かれるからなのでしょう?不安が多い時です、お側に着いて上げて下さい」
貴雄様が申し訳なさそうな顔をなさるので、笑って見せる。
「此処へ立ち寄って下さった、そのお気持ちだけで十分です。それに私には姫宮がおります。」
「貴女が本心でおめでとうと言ってくれるのならば、それはとても嬉しく、そしてとても切ないものですね」
私の頬に触れ、貴雄様は桐壺を去って行かれる。
「女御様…」
心配気な顔をする真子に微笑む。
「大丈夫よ」


