平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




「私がこのような時刻に、先触れも無しにいきなり北の対に行く訳には行かないわ」



御帳台に座ったままの私に朱雀は眉を寄せる。



「でも、万が一という事も…」



「命の危険があるならば、すぐにでも駆け付けるけれど……そういった心配がないのよ。」



まだ納得のいかない風の朱雀をくすりと笑う。



「こうも心配してもらえて、私も嬉しいわ、ありがとう。私も、真子が見境もなく調伏するようなら出向くわ。きっとそんな子などではないもの、大丈夫よ」



見境なく調伏してしまう可能性が無いわけではない。今まで私が何を一番気にしていたかというと、正しくそれなのだから。



だが、真子も悩んでいたのだ。



昼間の会話や就寝前の会合で、真子も私が敢えて手を出していない事に気付いた筈だ。



だから、十二天将達が甘いと言及し変な諍いまで起こるに至ったのだから。



ここまで手を出したのだから、これ以上私が出る訳にはないかない。



それに、これでも判っていないようなら、私の見込み違いというものだ。



「朱雀、私はこれ以上手は出さないと貴方達に約束したのよ。気になるなら貴女も見届けて来なさい」



その言葉に朱雀は背筋を伸ばす。



「いえ、姫をお一人には出来ません」



そう言いつつも、朱雀は真子の元に行きたくてしょうがないようで、そわそわしている。



朱雀と真子は見た目は変わらぬ年頃なので、仲が良かったから気になるのもしょうがないか。



「大丈夫よ此処は安全だもの。それに天空も来てくれたようだし」



姿は見えないが、天空の気配がする。



朱雀の心でも読んだのだろう。



天空が姿を見せ、その場に胡坐をかくのを見ると朱雀は、いろいろと言いたそうにしながも何も言わず頭を下げた。



「申し訳ございません!!全てを見届けたら、すぐに御前に舞い戻ります」