平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




普段は落ち着いている、六合、太陰そして勾陣までもが冷ややかな視線を太裳に投げつけ、ぴりぴりとした空気を放っている。



いや、まだここまでは良いとしよう。



「ちょっと、何を勝ち誇ったような顔をしてるの!?どう言う意味!?」



憤慨した様子の天后、白虎、玄武が太裳に詰め寄る。



三人に詰め寄られても、太裳は少しも動じた様子はない。寧ろ嘲笑すらしている。



「そのままの意味よ。式神たるものが情けないって事よ」



「まだ百歩譲って情けないとしても、聖凪よりも下って事は許せないわっ」



力を込めて言う玄武に、後の二人が深く頷く。



……一応は主である私に、何て事を。



何だか妙に切なくなってきたのは、気のせいではないだろう。



朱雀がおろおろと仲裁しようとしているが、そんなもの誰の目にも入ってはいない。



今にも力を使いそうな青龍も、なんとか貴人が引き止めているが、青龍は放っている殺気を収めようとしない。



あぁ、この対屋がここまで激しく荒れるのはこれが最初で、最後ではないだろうか……



この天将の下らない争いに巻き込まれるのが嫌で、傍観していると、不意に玄武と青龍が物凄く鋭利な目付きで此方を振り返る。



「元々、聖凪が真子に太裳を付けるからいけないのよ」



「だから、朱雀か貴人を、と忠告したのに、聞く耳を持たねぇから!!」



いきなりの攻撃に、怯んでいると。二人は「だいたいいつも」だの「自由すぎて」だの言いたい放題だ。



責める相手が太裳から主に換わったため、貴人、朱雀だけでなく流石に、勾陣、太陰、六合も二人を宥め始める。



そんな不穏な空気の中、真子が母屋へと現れた。