「せっかく壁を乗り越える、良い機会だったのに。気付かれてしまったら聖凪のせいよね」
夜の帳も降りきった一人の御帳台の側、珍しく十二天将が集っていた。
これも皆、真子の事を想ってくれている証だろう。
「姫、あまりあからさまに手を出すのはよろしくないかと……」
珍しい事に貴人まで抗議した事で、太陰が静かに「ほらな」と笑った。
でも、あからさまに手を加えたつもりは無いのだが。
ただ、呼ばれて卓巳君に当然の如く着いてきたお二方に、私の力をほんの少し流し込んだだけだ。
皆に責められ、少しむっとしそう呟くと、勾陣があきれ顔で首を横に振る。
「魂魄そのものの力を一時的に高めるのならまだしも、ご自分の力を流し込むなど、手を加え過ぎと言わずに何と言うのです。」
そうは言うが、弱い魂魄の力を一時的にでも高めようものならば、力を使い果たし、魂魄は直ぐにでも消えてしまう。
そのような事になりでもしたら、今こうして悩み試行錯誤している意味も無いではないか。
「試行錯誤も何も、お前は短絡すぎやしなか」
やれやれといった風の青龍を、きっと睨む。
それを青龍には言われたくはない。
だが、そのささやかな抵抗も勾陣によって飛ばされてしまう。
「今回ばかりは、青龍の言が正しいです。」
集っている全員に深く頷かれ、認めざるをえなくなった私は、肩を落とすしかなかった。
「ごめんなさい、ここまで手を出すのはこれきりにするわ」


