平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




「おやめなさい。でないと人を呼びますよ、侍従殿」


「なっ誰だ!?話せっ!!」



「侍従殿がこの姫君の御櫛を離すまで、私も貴方の腕を離すわけにはいきません」



だ、誰─────!?



この人、アタシを助けてくれるの?それとも侍従とかいうコイツと同じ事しようとしてるの!?



早くここから逃げだしたい。



いきなりだった、アタシの髪に掛かっていた力が無くなったのは。



「っぅく!!離せっ…痛いっ腕が、腕が折れるっ!!」



「いくら酒に酔っているとはいえ、見ず知らずの若い女人にこんなことをするのはおやめなさい。大夫殿が悲しまれます…」



「くそがっ…」



あっという間に終わった、若い男と男のアタシの取り合い。



って、アタシら今からこの人にどうされちゃうのっ?食べられちゃうのっ?