怨まれる事を怖がる辺り、私もまだまだぬるま湯に浸かっている様だ。
父や兄の顔を思い浮かべ、苦い顔をする。
あの二人はどんな冷徹な事でも、眉一つ動かさずこなしてきている。
公私を区別しているからこそ、一流なのだ。どんなに冷徹であろうと、そこから信頼を勝ち得ている。
入内した私には、今さら必要のない事にも思えるが、親しい人が増える度。愛しい人の幸せを護るため、やはり持っていた方が良いのも確かだ。
──────だが、母でありながら、その判断を下すのはやはり辛い。
誰かを護るために、誰かを犠牲にする事が出来ない限り、私はまだまだ半人前。
この考え方は普通の人には、到底理解できないだろう。
だが、私も母になったのだ。
強かさも何れ出て来るだろう。想う気持ちを忘れなければいいのだ──────
…なんて、それも綺麗事ね。
二兎を追うものは一兎をも獲ず
自分が成りたいものは、母か陰陽師か………
なんだか可笑しくなってくる。
肩を震わせる私に、女房達はきょとんとする。
そんなものは決まっている。
開いた瞳が定まり、傲岸な光が宿ったのを十二天将だけが見止める。
────そんなもの既に決まっている。
選ぶまでもない。
今さら何だ。
眠っている姫宮の頭を一撫でし、目を細めた。


