笑顔を向ける真子に、切なくなる気持ちを抑え微笑み返す。



「私が提案した事ですが、貴女が居なくなるなるとここも寂しくなりますね」



「身寄りもなく身分もはっきりとしない、私のような者をお側に置いてくださり……またもったいないご縁まで……感謝してもしきれません」



真子の仄かに滲む涙につられ、私をはじめ側に控えている数人の女房たちも娘を送り出す親の様な気分になる。



「身分など、そのようなものはどうでもよいのです。私はただ貴女が本当に可愛くて……もっと沢山の事を教え、貴女を護りたかった」



だが、彼女には幸せになって欲しい。平穏に、彼女を想ってくれる人の側で静かに過ごして欲しい。



私の側ではあまりにも奇々怪々な波瀾万丈な生活になってしまうだろうし、私の勝手な振る舞いでお祖父様に迷惑をかける事は出来ない。



安芸の方の下で暮らすのが、全てに置いて一番良いと思う。



真子の後見は務めれるのだ、それだけでも幸せな事だ。



少し離れた所からも護る事は出来る。



何せ私は陰陽師なのだから。



「……幸せになって下さいね」



涙を堪えて微笑むと、真子は「はい」と優しく頷く。



「このご恩は決して忘れません。いずれ必ずお返しいたします」



そう言って笑う真子は来た時と同じ、晴れやかな笑顔で頭を下げた。



初老の女房が堪え切れずにすすり泣く声が聞こえる中、遅れて安芸の方が姿を現した。



「女御様にはなんとお礼を申し上げればよいか……女御様からお預かりした姫は、大切にお育てします」



深く深く頭を下げる安芸の方に、此方からも惜しみなくお礼の言葉を言いたい。



「ご健勝をお祈りしています」