ザァーッ……
そう思った時、一陣の風とともに男らしい爽やかなアタシ好みの香の匂いが広がった。
今日の天気は雲一つない快晴。それに付け加えて、見事な望月。
黒視眼でなくても、結構な距離を見渡せるんではないだろうか。
数歩先に背の高い直衣を着た人影が見える。
今日は付いていない。
一日に二人もの成人男性に出くわしてしまったのだから。
いくらアタシが成人していないと言っても、普通に成人していておかしくない歳で……。
身体は大人と一緒。すでに成長しきっていて……。
そしてアタシはもう子供が出来る身体なのだ。今まで裳儀の話が出なかったのが不思議なくらい。
先程の風で烏帽子が飛んでしまった酔っぱらいの手が緩む。
好機とばかりに、逃げる体制をとったアタシに酔っぱらいからの馬鹿にしたような一声。
「待ちなさい!!私から逃げれるとでもお思いか?」
より一層力が掛かるアタシの頭。
「っつ!?」
もう嫌だ。
涙が零れた。


