明くる日、真子は支度があるため当然まだ姿は見せてはいなかった。



側に居る柊杞も何時もと変わらぬ表情で、昨夜の事がどうなったのか読み取る事は出来ない。



真子は巳の刻に立つ事になっていて………おそらくこれが最後の会合となるだろう。



もう随分日が高くなっている。そろそろ巳の刻になるだろう、何時もなら真子の手習いの最中である。



はあ、と大きなため息をついていると、柊杞の呆れた声が響く。



「女御様」



ちらりと柊杞を見ると、咳払いでもしそうな雰囲気だ。



柊杞が投げた視線を追うと、何時もの軽装とは違う余所行きの格好をした真子が姿を見せたところだった。



真子のそういった姿は初めて見るが、ため息が出るほど可愛らしい。



真っ直ぐと伸びた髪が好まれるが、真子の緩くうねっている髪が可愛らしさを際立たせている気がする。



あと数年もすれば、絶世の美女となろう事が容易に想像できる。



その事を思うと、やはりこの先の真子の成長を見守れないのが悲しくなってしまう。



私の周りに控えている女房たちもそう思ったのか、所々でため息が漏れるのが聞こえる。



私の前に座り、真子が顔を上げるまで思わず見とれてしまっていた。



そして、顔を上げた真子の表情を見てとても切なくなる。



きっと昨夜、柊杞は真子とうまく話す事が出来たのだろう。



───顔を上げた真子は、最後に見た寂しげな顔と打って変わり、とても晴れやかな顔で笑っていた。