平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




というわけで、必然的に夜警をする時は右京になる。たまに、左京で貴族が雇った陰陽師が放つ呪咀や、生霊などにも出くわすがその程度なら、安倍晴明に鍛えられたアタシには朝飯前。



(朝飯前っていうか、夜中なんだけど…)



大きな通りを出来るだけ避けて右京に向かう、だってこれでも貴族の年頃の姫なんですもの。…まだ成人してないけれど。



顔を見られでもしたら…いやいや、それくらいどうってことはない。だってアタシは美人の部類に入るんだもの。



問題は素性がバレはしないか、ということ。そんなことがあったら、アタシは一生結婚なんて出来ない。



まだ結婚しないとは言ったけれど、一生結婚はしないということではない。今はしなくていいということだ。



いくらアタシでも、大恋愛とはいかなくても多少はそう言ったものに興味がある。



だって母は、自分よりはるかに身分の低い父に嫁いだのだから…。



それなりの、物語があったに違いない。



そして、どうしてこんな事を考えている時に限ってこういう事に巻き込まれるのだろう…。



こんな事になるなら、家を出る前にちゃんと占じてくればよかった。



今さら後悔しても、もう遅いんだけど。