平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




切ない表情の中に微かに喜色が見えている藤壺の女御に、女房は嬉しく思ったのかそれまで以上に笑顔になる。



『文にも書いてあると思いますが、お子がおできになったと』



それはもう満面の笑みで言い、それに続き何人かの女房が嬉しそうに目を見開く。



『それは本当ですか?』



『ええ、本当にございます。兼房様の北の方、女六の宮様のお腹にです』



『まあっ』



周りの女房が華やぐなか、藤壺の女御一人は目を見開いたまま……呼吸をするのも忘れたかの様に静止していた。



暫く藤壺の女御の変化に気付かなかった女房たちも、異変に気付き始めた。



『女御様?如何なさいました?』



近くにいた女房の一人が藤壺の女御の肩を揺する。



為されるがままに揺れていた藤壺の女御の瞼ふいに落ちた。



それに驚いた女房が声を上げる。



『だっ誰か薬師をっ』



『女御様がっ藤壺の女御様がっ』



騒然となった藤壺を静かに悪鬼が侵食していた。



気を失っていた藤壺の女御が苦しみ始めたのだ。



その尋常ではない苦しみ方に、女房たちも時を止めた様に静かになる。



暫く呆然の眺めていた女房の一人、格の高い女房だろう一人が声をあげた時



『姫様っ』



先程私が梅壺で聞いた女の叫びが響いた。



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其処まで視ると、私の意識は悪鬼の力で弾き出された。



「姫様っ」



よろめいた私を、朱雀が後ろから支える。