力なくうなだれる小さな背を最後に、また情景が移る。
──此処は、藤壺。
私が今居る場所と雰囲気は随分違うが、視ている場所は藤壺で相違ない。
藤壺の女御の衣を見るに、入内後すぐ……如月頃だろう。
女房達を離し、部屋の奥でただぼおっと何処か遠くを眺め涙を流している。
その手の中には今しがた読んだのだろう、文が握られていた。
此処からでは文の内容までは見れないが、暫くそうしていた藤壺の女御はぎゅっと文を握り潰し、側に置いてあった火鉢の中に入れる。
火が上がる様を涙に濡れた目で眺めている女御から…いや藤壺から何か黒い気配が感じられる。
………この気配は悪鬼
辺りを見回した時、少し離れた所で悲鳴があがる。
…きっと白虎だろう。
改めてため息が出そうになる。
気持ちを切り替えもう一度、藤壺の女御に視線を戻す。
先程の叫び声に少しも驚かず、冷めた目で声のした方を見やっていた。
この後、父上ではなく陰陽の頭が訪れたと言うが………
───藤壺の女御と悪鬼が繋がりを持ったのはこの時以外に考えられない。
何しろ、今の藤壺の女御の目は恐ろしく深い闇を移している。
やはり、気付けなかった私のせいとしか原因は考えられない。
藤壺の女御の目に見止められた様な錯覚に陥り、心臓が冷えさらに鼓動が早くなる。
背を伸ばして術を続けられるのも、後少しだろう。
頭を振りもう一度藤壺の女御を視ろうとすると、急に情景が変わった。
今度も藤壺。
時期は………恐らく今日。
またもや藤壺の女御の手には文が握られていた。
違うのは、まだ開かれて居ないというだけ。


