平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




母屋全体が重い闇に包まれている。私でさえ胸が重く、息苦しい。



「忍、貴雄様を連れて此処を出なさい」



貴雄様はこの突風のせいで、気が遠くなっているのか片手と方膝をつき俯いている。



これでは意識を手放すのも時間の問題だろう。



私の上からの口調に、忍は眉間の皺を深くし不愉快そうにする。



「貴女も此奴も私を女房か何かと勘違いしているんじゃない?」



勘違いも何も今忍は、貴雄様付きの女房以外の何者でもないだろう。



「貴女が居ても邪魔よ」



ふいっと顔を背ける私に、忍は怒りを顕にするが直ぐに自嘲めいた笑みに変わる。



「……そんな事解ってる。でも、私には此処を一歩でも動く気力も無いのよ」



忍はそう言うと、それまで堪えていた膝から力を抜く。



忍が崩れ落ちる寸前、天空が忍と貴雄様の腰を抱き止め姿を消す。



「……あまり姫君の心の深い部分など、覗きたくはないのだけれど」



ふぅ、と息をつく私に朱雀が悲しそうに笑うのが見えた。



「…………開……」









─────……



『本当にお二人共可愛らしい』



『このように若君なら帝の憶えもめでたいでしょうね』



『姫様も沢山の求婚者がいらっしゃるでしょう』



『あら、姫様はきっと入内する事になりますわよ』



『ああ、そうでしょうね』



『ええ、きっとそうだわ』



『…でも、本当にお二人とも仲が宜しいですわね。手をきつく握って眠ってらっしゃるわ』



『さすが一緒にお生れになっただけあって……仲が宜しいのは嬉しい事ですね』