ここまで酷くなったのは私のせいでもある…………と言う事だ。
唇を噛む私を見て、朱雀が気遣わし気に口を開く。
「ですが、晴明様も直接藤壺の女御を視てらっしゃいます」
父上でも気付けないのだから、直接視ていない私が気付かないのは当然のこと。
朱雀はそう言っているが、それでは何時まで経っても私は父上の下を行く事になる。
「朱雀、いいのよ」
目に力の戻ったのを確認して、天后が口端を上げる。
「気付けなかった事は、もうどうしようもないわ。今からその悪鬼を調伏すればいいだけだもの」
不敵に笑う私を見て、その場にいる三人が力強く頷く。
私が藤壺に視線を投げるのを合図に、止まっていた足を進める。
幸い、藤壺と貴雄様の梅壺は隣り合っている。藤壺の女御の下まではすぐだ。
藤壺の結界を抜けるとその中はそれ迄の情景が嘘のようで、屋内だと言うのに冷たい風が吹き乱れていた。
その一画に貴雄様と忍、そして床に横たわっている藤壺の女御がいた。
その三人を護るように太陰が片手を上げ目を閉じていた。
「聖凪様っ」
私たちに気付いた太陰が視線だけを此方に向けてくる。
風に煽られる髪も衣も気にせず奥へと進むと、ようやく私に気付いた忍が眉間に皺を寄せる。
それを横目に、天空の支えもあり倒れて居る女御の隣に膝をつく。
顔にかかっている髪を流し、まだ幼さの残る梅壺の女御の頬に触れる。
「冷たい…」
触れた梅壺の女御は真夏というのに恐ろしく冷たく、そしてとても哀しく寂しさを堪えるような辛そうな表情だった。
まだ大人に成り切れていない少女には全く似合わない表情に、私まで悲しい気持ちが込み上げる。
梅壺の女御の面差しはそれだけではない。
悪鬼の暗い闇そのものも写していた。


