「朱雀」
天空が呼び掛けると、すぐにそこに現れた朱雀は、承知したと言う様に頷き光に包まれた。
瞬き一つの間に人間の女房が現れた。
ただ纏う気は朱雀の物には変わりない。
「流石に聖凪様をお一人で歩かせる訳にはいきませんので」
そうやって、少し首を傾ける朱雀にお礼を言いすぐに貴雄様と忍を追う。
「藤壺の青龍からは?」
足速に移動しながら聞くと、天后の声が響いた。
「何も言ってこないけれど、青龍の結界で藤壺を覆ってはいるみたい」
青龍の結界で覆ってこの瘴気となると、結界の内はいったいどうなっているのだ。
言葉の続かない私に、天后は更に続ける。
「でも安心して、結界の内には太陰がいて自分の神気で浄化を続けてはいるみたい」
「よかった……では藤壺の女御の様子は分かる!?」
「以前、藤壺に現れた悪鬼と同じ力を持ってるみたい」
天后の言葉に耳を疑う。
「どういう事?」
足を止め問い返す私の前に、険しい顔をした天后が姿を現す。
「言葉通りよ。悪鬼に憑かれてる」
「なっ」
絶句する私たちに天后は更に追い討ちをかける。
「………それも凄く奥深くまで同化してる。」
「考えるに、悪鬼に憑かれたのはあの犬よりも前」
天后が言う事が確かなら、悪鬼は随分の間私の近くに存在していた、という事になる。
……………しかし、私は全く気づけなかった。それは天将も同じで、悔しさが滲んでいる。


