平安異聞録-お姫様も楽じゃない-




忍は並みの人よりも、遥かに身体能力が優れている。



私も、そちらの方では忍に明らかに劣っている。



だが、あくまでもそれは身体能力であって、忍が物凄い霊力を持っていると言うわけではない。



確かに忍は、都の妖などは軽く見る事は出来る。力の弱い妖などなら、気合いでどうにかしてしまう。



だが霊力があるかと言うとそうではない。



忍は闇を暗躍する一族なのであって、闇を自らの領域とし司っている私達陰陽師とは違うのだ。



いくら忍であろうと、藤壺から感じれるものをどうにか出来るわけがない。



「いけない、貴雄様………」



天照の血を引いている貴雄様など、滑降の餌食ではないか。



すぐに知らせをうけた陰陽寮の陰陽師が駆け付けるだろう。だが、それでは間に合わない。



私が何も出来ずに俯いている間にも、闇が深くなっているのが感じれる。



貴雄様のお気遣いは分かる、深い優しさも痛いほど感じる。



それでもごめんなさい



貴方様が想っていらっしゃるように、私も貴方様を心からお慕いしているのです。



苦渋で閉じていた瞼を、定まった心ともに開く。



「天空!!」



「いいのか?」



「ええ」



此処で己が身可愛さに、藤壺の女御や貴雄様を見捨てる等、安倍の陰陽師の教えも自分の信念にも反する事になる。



心配の色が微かに覗く天空に、苦笑をもってかえす。



「後々、救けれなかった事を悔いるより断然いいわ」



天空はため息を溢し、微かに笑みを浮かべる。



「主人に従うのが我等の勤めだからな…」