別れ際に一鬼が教えてくれたけど、やっぱりここは二条大路だったみたいだ。
京の都は碁盤の目のような造りになっていて、同じような建物がたくさん並んでいる。
そしてもちろん、アタシも都全体を歩いたわけじゃないし、知っているわけでもない。
だから迷うことだってあるわけで…今より四つ若い時、今のように夜の都に出て迷ってしまい、明け方まで泣き続けたこともあった。
それくらい、平安京は広いのだ。
そして、平安京は左京と右京で朱雀大路を境に二分されている。
左京の方は大貴族の邸がたくさんあり、土地もしっかりしているが、右京の方は貴族の邸も少なく荒廃している。
その証拠に、もう人が住まなくなって随分経った邸には、さっきのような雑鬼たちがねぐらにしてしまっている。
そして右京は治安も悪い。
雑鬼たちも貴族が住まなくなった屋敷をねぐらにするが、盗賊や罪人などもそこに住み着く。
雑鬼たちの悪戯も質が悪いが、盗賊や罪人はもっと質が悪い。
よって、右京に住んでいる大貴族たちは屋敷を手放し、左京に入る。中流貴族や貴族とも呼べない者たちはそのままのこり、どんどん錆びれていく。
まったくの悪循環である。
そういう事が背景にあるせいか、怨霊や物径、妖などの妖異が右京に集まるのだ。


