雪の朝、君が眠りにつく前に



初めてキスをした日、朝綺は言った。


『今回だけ、1回だけ、謝っとく。

ごめんな。

おれの体じゃ、何もできない。

自分からキスすることも。

手をつなぐことも。

触れることも、抱きしめることも』


キスしてくれ、って朝綺はあたしに告げた。

体を寄せて手で触れれば、応えてくれる体温があった。

朝綺が生きて、ここに存在する。

あたしは、それだけでいいと思った。


『不甲斐ない。

男として、ほんと不甲斐ないから、ごめんな。

でも、恋したことを謝罪したり後悔したりはしない。

麗への気持ちに嘘はねぇんだ。

そのぶん不甲斐ないけど、後悔のごめんは絶対言わねえ』


あたしもそう。

朝綺を好きになったこと、絶対に後悔しない。