雪の朝、君が眠りにつく前に



モニタに一文字、そっけないブロック体が現れる。


〈麗〉


朝綺の声が、あたしの頭にリフレインする。

繊細で爽やかな声だと、初めて聞いたときに感じた。

朝綺の声がささやけば、あたしの名前は、世界一甘く響いた。


「何?」


〈カーテン開けて〉


「え……あ、そういえば。

珍しいわね。

おにいちゃんがカーテン開けるのを忘れるなんて。

今朝も着替えの介助に来たんでしょ?」


あたしはモノトーンのブロックチェック柄に手を触れた。

サッと音をたててカーテンを開ける。

ちょっとした出窓の向こうは、グレーホワイトの空。

ガラスにまとわり付いていた冷気が、鼻先を撫でた。