唇を離す。
朝綺の頬に触れて、髪に触れて、肩に手を載せて。
体を寄せて、額にキスして、頬をくっつけ合って。
すがり付いて甘える。
ネコみたいだと、朝綺に言われたことがある。
だって、あたしはうまく言葉にできないから。
それに、朝綺がここにいることを、触れて確かめたいから。
不条理だ。
悲しみより怒りより、悔しさが圧倒的に強い。
あたしには、どうして、今すぐ朝綺を救う力がないんだろう?
――麗。
呼ばれた気がして、朝綺の目を見つめた。
微笑みが、そこにある。
透き通りそうなくらい純粋な熱が、瞳に宿ってる。
――好きだ。
吐息のような声が消える最後まで、ささやいてくれた。
あの響きが、あたしを動かし続けている。



