雪の朝、君が眠りにつく前に



〈麗、〉


モニタの文字が続きそうな気配がある。

あたしは朝綺の右手を、両手で包んだ。

長い指、関節の目立つ形、つやを失った爪。


「記録、残っちゃうから、ダメ」


あたしたちだけの時間は、誰にも触れさせたくない。

2人きりのものにしていたい。


朝綺の右の手のひらに、あたしの左の手のひらを添わせる。

乾いた感触。

指を絡ませてみる。

静脈の浮いた手の甲に頬ずりをする。


見つめ合えば、朝綺の声が心に流れ込んでくる。


――キスしたい。


そっと唇を重ねる。

朝綺の静かな呼吸を感じる。

薄目を開けると、朝綺の長いまつげが見えた。

キスのとき、朝綺は必ず目を閉じる。


好き。


あたしは朝綺に出会うために生まれてきた。