県警と警視庁との指揮系統の乱れや調整の為に、倉本や巽がオーハ島に向かい始めたのは日暮れになってからだった。

ようやく海上保安庁の巡視艇を回してもらい、オーハ島へと向かう。

犯罪とは無縁に思える、美しい砂浜。

ここに瀬尾がいるのか。

そして、もしかしたら環も…。

逸る巽に。

「巽」

倉本が声をかけた。

「冷静になれ。焦りは判断ミスを生む。環さんが大事だ、無事助けたいと思うのなら、危機に陥った時ほどクールになるんだ」

「…分かってます」

言いながら、巽は手にした狙撃銃に弾丸を込める。

M24 SWS。

レミントンアームズ社製のボルトアクション狙撃銃。

万が一に備え、巽はいつものコルトローマン以外にも、この狙撃銃を準備していた。