かすみを抱きしめると、 目を閉じて。 そして名残惜しい思いでいっぱいになった。 (これで...かすみは俺のものじゃなくなる。 その手に触れようとしても。 今からは触れられない) 分かっていたけれど―。 「しゅう……、好きだったよ」 その言葉に目を見開くと、かすみは俺を突き放した。 ウソひとつ無い、変わらない笑顔。 ゆるゆると頬を赤く染め、俺の目の前から立ち去っていった。 「......最後まで、ずるいぜ」 また溢れ出した涙は、情けないけれど―。 止められなかった。