クールな君の溺愛







「橘さんの部屋、そっちだから。」

藤堂くんが指さしたのはもともとは一部屋の場所が扉で仕切られた二つの個室のうちの大きいほうで

「いいの?」

てっきり追い出されたから狭いほうか、隅っこだと思っていた私がそう問うと

「女子に狭い部屋を渡すくらい心が狭いと思われていたなんて、心外だね」

藤堂くんはまゆを潜めてそう言った。


「さっさと、部屋に入れば?」


促されて私は部屋に入ると

「えっ?」

その中の光景に目を開いた。

たくさん山積みにされているはずのダンボールが綺麗に片付けられていて、ベットやタンスのなかに綺麗にしまわれている。

ベットメイキングまで、ばっちりだ。


「藤堂くん、これ………」

「別に、暇だっただけだよ」


顔を背けた藤堂くんは耳が少し赤らんでいて


「ふふっ、ありがとうございます。藤堂くん」

「別に………」


不器用なだけで、本当は優しい人なのかもしれない。