クールな君の溺愛







「じゃあ、そういうことだから」

藤堂くんはそういうと、ドアに手をかけた。

「まっ、待ってよ!」

縋る声もむなしく

バタン

扉はしまってしまった。


そんなぁ………。
お父さんとお母さんは、もう出張に向かってしまって家は貸してしまっているから帰れないし、荷物はもう部屋に送ってもらってるからどこかにも行けない。
さっちゃんだって今日は部活にバイトに忙しいから電話するなんて迷惑をかけてしまう。


「どうしよう」
呟いた声があまりにも湿っぽくて、初めて私は自分が泣きそうなことに気づいた。

『ひとり暮らしは大変だから、まだ、やめておきなさい』
と言ったお父さんに、私だってできるもん!って言ってはじめさせてもらったお試しのひとり暮らしだけど、早くも挫けそう。


ドアの前で膝を抱えて座り込んでいると


ガチャリ

無機質な音がして藤堂くんが顔を覗かせた。


「………入れば」


目を合わさないまま呟くようにそういうと藤堂くんは背を向けてしまった。


これ、入っていいのかな………?


「さっさとしてくれない。風が入る」

「ぁ、うん」


おずおずと私は藤堂くんの後を追った。