2人並んで道を歩く。

あれっ?前から歩いてくるのって…
私は右手を大きく振って
「Shuさ〜」

Shuさ〜ん!そう呼ぼうとしたのに

「しゅう…せい……?」

慶ちゃんに先を越された。

「あれっ?Shuさんと知り合いだっ」

またもや私の言葉を遮り慶ちゃんは

「柊惺てめぇ!!!!!」

と言いながら、Shuさんのところまで走って行くと、右手の拳で彼の右頬を殴った。

その途端鈍い音がする。

私は急いでShuさんのところに駆けつけた。

「ちょっ、慶ちゃん!やめて!落ち着いて!!慶ちゃん!」

慶ちゃんはまた拳をつくっている。

「慶ちゃ……っう…っはぁっ……うぅ”っ…はぁっ、はぁっ、うっ……」

あ、やばい。また発作だ…。

彼は目を見開いていた。

驚いたのだろうか?まぁ、そうだよね。

「りっ、莉々夏?!大丈夫かっ?!救急車!!」

慶ちゃんは慌ててジーンズのポケットからスマホを取り出す。

「慶ちゃっ、はぁっ……大丈夫、だから……うぅっ…。み、水……お水買って……きて……はぁ、はぁ、っうう……」

「わっ、わかった。今買ってくるから!」

慶ちゃんは走って行った。

少ししたら発作が治り、気分も良くなった。

「やっぱり……」

先に口を開いたのは彼だった。

「え…?」

「やっぱり風邪じゃなかったんだな。」

「……」

「楽屋にベッドがあったのも、大量の薬を飲んでたのも、全部それが原因か。」

「バレてました…?」

「大体はな。楽屋で発作出てたとき、俺見たし。そのあとすぐマネージャーさん来たから帰ったけど。」

「えと…」

「なんで隠すんだよ。俺ら友達だろ?」

––––––ズキッ

またこの胸の痛み。なんなんだろう。

「そう…ですよね。あっ、あのっShuさん!連絡先、教えてもらえませんか?」

「あぁ、そうだったな。ケータイ貸して?」

彼は私のケータイを取ると慣れた手つきで自分の連絡先を登録した。



「俺の名前は、描 柊惺(えがく しゅうせい)。莉々夏は、しゅうちゃん、って呼んでたよ。」

「えが…く…しゅう…せい…。
珍しい苗字ですね!」

「莉々夏に言われたくないけどっ。
まあ、珍しいよな。」

「‘‘ 猫 ’’って間違えちゃう人、いません?(笑)」

すると柊ちゃんはまたあの時と同じ表情で空を見上げて

「同じ事、言ってたやついたな…」

と呟いた。