その時、慶ちゃんから電話がかかってきた。
何故こうもタイミングよく、彼がいるときにかけてくるのだろう?超能力でも使っているのかな。

「もしもし、慶ちゃん?」

ー『もしもし。莉々夏、大丈夫か?』

「うんっ、平気♪」

ー『そうか。今からそっち向かうんだけど、なんか欲しいもんあるか?買ってくぞ。』

「じゃあ、いつものガトーショコラ買ってきて。うん。はーい。じゃあ、またあとでね。」

通話を終了した瞬間、目眩がした。
あっ、ちょっとえらいかも…。薬飲んどこ。

ポーチを逆さにして振り、大量の薬を出すと、残り少ないペットボトルの水で一気に流し込む。

「どうしたんだ?」

あっ、しまった。彼がいること忘れてた…。

「いや、えっと……風邪…。」

「ん?」


「風邪なんです!」

あっ。余計怪しまれてる…?

「……本当か?」

「本当です!!!!」
流石にバレるか…?と思ったので話題を無理矢理変えてみた。

「あっ!そういえば、私の彼氏、今からこっちにくるんです!会いませんか??」

彼はグイッと眉間にシワを寄せた。

「あ、いや…俺は…帰るよ。じゃあっ」

そう言うと、急ぎ足で帰って行ってしまった。

そういえば彼、慶ちゃんの話をすると、少しピリッとなる気がする。
気のせいかな?

あっ、また名前と連絡先聞くの忘れちゃった。

まあいっか。


その日の仕事はお昼で終わり、楽屋に来てくれた慶ちゃんと一緒に家に向かった。