君のいる世界

｢これはダメだから｣



　顔を真っ赤にした結輝さんがカメラに伸ばした腕をくぐり抜けて、礼治さんのほうに逃げたけれど、肩をつかまれて呆気なく腕の中にすっぽりと収まった。

　礼治さんとはまた違う、爽やかな香りがする。どうしても比べてしまうのは礼治さんのことばかりだ。



｢結輝さん、いい表情してます｣



　結輝さんの腕の中で、カメラの液晶を抱えて見上げると真っ赤な顔をした結輝さんが、カメラの消去ボタンに手を伸ばしてきた。



｢ああっダメです｣

｢これは残しておけないから｣



　必死に胸にカメラを抱え込みガードするのに、結輝さんは力づくで手を外そうとしてくる。

　せっかく上手く撮れたのに、消されたくなくてもみあっていたら、すぐそばから礼治さんの声がした。



｢そんな結輝、初めて見たわ｣



　腕を組んで、視線はカメラの液晶を見ているのに、そっけなく冷たい感じがした。結輝さんの腕がゆるんだ隙に抜け出して、礼治さんに液晶画面を差し出す。



｢どうでしょう師匠、けっこうイイと思います｣

｢いいね。俺には撮れないわ、これは｣



　ふいに礼治さんが顔をほころばせた。その顔が、なんの飾り気もなくてドキドキしてきた。素の礼治さんが見れたみたいで顔が熱くなってくる。

　イケメンの不意打ちの笑顔は、破壊的がハンパない。しかも腕がふれるほどの至近距離で、あたしでなくてもドキドキしてしまうはず。


｢じゃあ撮影再開といきますか｣



　礼治さんはあたしの頭に手をのせてくしゃくしゃとなでた。

　その瞬間、ぱあっと目の前が明るくなる。礼治さんに構ってもらえるのが、すごく嬉しい。あたしみたいな、年下のうるさい子でも礼治さんはすごく優しい。