好きだって気持ちは、そんなに簡単になくなってしまうものなんかじゃない。


少し前を歩く広い背中を見つめる。


好きになったら、礼治さんの全部が欲しくなってしまう。

広い背中も、温かい腕の中も、はにかむような笑顔も。


絶対に忘れない。


礼治さんに触れたこと、話したこと。全部覚えてる。


「………すき」


少し前を行く礼治さんが、遅いあたしを気にして、立ち止まって振り向いて待っていてくれる。

早足で追いついて、またゆっくり歩きだす。このまま礼治さんとずっと歩いていけるなら、ずっと夜が明けなくたっていい。


宵闇を礼治さんと歩いていく。ずっとずっと歩いていけたらと願いながら。