ぐずぐずと鼻をくずつかせていたら、スタイリストの青木さんが、ティッシュを渡してくれた。

通話口を塞がれた向こうは音がくぐもって聞こえない。どうしよう…こんなメンドクサイ女なんて嫌がられる…



なだめるように青木さんが背中を叩いてくれて、自分の感情に振り回わされていたのが落ち着いてくる。

青木さんとは以前も仕事でお世話になったことがあって、妹みたいに気にかけてくれる。斜め後ろをむくと優しい目をした青木さんと視線が絡む。涙をぬぐいながら頷くとにっこり笑ってくれた。



『玲奈ちゃん、礼治さんからOKが出たよ。逃げやしないから落ち着いてからおいで』

「~~ありがとうございますっ」

通話口からの声に嬉しくて涙が止まる。なんて現金なんだろ。それから伊部さんはお店の名前と場所を教えてくれて、タクシーの運転手さんに言えばいいからと電話が切れた。

「…ほんと嬉しい」