声を聞いただけでわかった。それだけで心がふるえた。

「お願いです…電話を代わってください」

スタイリストさんからスマホをもぎ取って耳を寄せるとわザワザワとしたざわめきはどこかの店であるらしかった。

「突然すみません、柏崎玲奈と言います。あのっご挨拶がしたいのですが、どちらに居られますか? 」

驚きが電話口から伝わってくる。失礼なのは、知ってる。それでもあたしも必死に言い募る。

「お願いします。お邪魔しませんから、本当にご挨拶だけでいいんです……」

必死に言っていたら、涙がぽろりと頬を伝った。途端に鼻までぐずぐずと言い出して、まずい止めなくちゃと思えば思うほど涙が止まらなかった。

「あのっ…本当にご迷惑かけないようにしますから……」

電話口で泣いている女が言っても説得力がないとわかっているけれど、編集さんは優しかった。

『とりあえず、落ち着いて。礼治さんに確認取るから』