「どんな噂ですか? 」

「ゲイだとか」


 ぶはっと吹き出した結輝さんが、みるみる真っ赤になっていく。


「それって人権問題ですよ」

「だよねー。これもプライベートなことなんだけど」



 その言葉には軽さが無かった。不機嫌にしかめられた眉間からは剣呑な雰囲気しかない。


「あの熊からどこまで聞いているのか知らないけど、俺はね仕事とプライベートを分けたい。特にこういった状況の時はね。お前、どこに仕事に行ってると思ってんの? 俺でさえ不義理出来ないような先生のとこ行ってて、身内でもない先輩の手術なんて所に来てていいと思ってんの? すぐに帰りな」

「……休むって連絡入れてます」

「きっと撮影現場では困ってる。誰だってレフ板を持てるかもしれないけど、お前は技術を盗みに行ったんだろーが。頼んだ期間だけでお前がどんだけ盗めるものがあるかは知らないけど、行きもしないなんて俺の顔に泥ぬってんの? 」

「撮影よりも、礼治さんのこと心配したらいけないんですか? 身内でなくても、ずっと一緒に仕事してたのに、手術するのが気にならない訳ないじゃないですか! 」