「……えっ病院? 手術? 」
「早く。行きながら説明するから、俺について来て」
必死な様子の結輝さんからは嘘を言っているような気配はない。
「行きなさいよ、玲奈。その礼治さんて、あの山崎礼治でしょ? あんたの憧れの」
「そうです。その山崎礼治が今日、手術なんです。だから玲奈ちゃんに手術室に入る前に会って励ましてもらいたいんだ!! 」
ビックリして声の出ないあたしを、結輝くんがぐいっと引っ張る。
「あの、あたしなんかでいいの……その奥さんとか、は?………」
むしろ行ってはいけないのでは?
「そんな人、会ったこともないよ! 今まで、一度も。心の病気で礼治さんですら拒んでいる人なんか当てに出来ない」
「行きなよ、玲奈」
そばに来ていたおねーちゃんがぎゅっと肩を掴んできた。
「悩むなんて、あんたらしくもない。ずっと10年もバカみたいに想い続けてきた人なんだから行きなよ。私の妹はほんっとバカだけど、そういうタイミングは逃さないのよね」